いきなり、病院全体が揺れ始め、天井が崩れ落ちてきた。あまりに突然なので、脳の処理が追いつかない。
彼はその場に這いつくばり、やり過ごそうとした。
だが、揺れはいっこうに収まる気配はない。その間にも、天井は崩れ階段を塞いだ。
母親と彼を繋ぐ、唯一の道。それが今、閉ざされていく。
彼は絶叫し、母親を呼んだ。せっかく再び会えたのに、と。
希望が塞がれていく中で、最後に彼は見た
階段の上に立つ母親の姿。パジャマにスリッパ。そして、抗ガン剤の副作用で髪のなくなった頭。
その顔は、
笑っているようにも
泣いているようにも
怒っているようにも見えた。
その姿が一瞬消え、再びあらわれた時には、彼が幼い頃の母親に戻っていた
エプロン姿の
長い髪
優しい笑顔
彼の母親はそこに居た
そして、長い夢はそこで途切れた