和洋を問わずに鉢植えに植わっている、サルビア、キキョウ、ダリア、ヒャクニチソウ、鳳仙花、立ち葵なんかも綺麗だった。
美しい庭に、依代は目を奪われた。
「綺麗だろ?」
龍太郎が言った。
「全部俺が世話してるんだぜ。枝切りから水やりから草取りまで、全部な」
「うそ…植木職人がやったのかと思った」
依代は素直に驚いて言う。それほどに素晴らしい庭だったのだ。日の光を受けて庭全体が輝いて見える。こんなにも広い庭の、しかもたくさんの植物を一人で世話をするなど…面倒くさがりやの依代には到底無理だった。
「こんな綺麗な庭のある、むっちゃでっかい家に、お前は今日から住むんだぜ?嬉しく思えよ幸せ者」
「う、ん…」
「んな、しょげた顔すんなよ?おらおら、もっとテンション上げてこうぜ?」
あまり乗り気ではない依代に、龍太郎は声を張り上げて言う。っが、依代は無視をした。
それに気づいてか気づいていないのか、龍太郎は言う。
「ほら、庭鑑賞は終いにしてよ、中に入ろうぜ。日射病になっちまう」
「わかった」
依代が頷くと、龍太郎は川に架っている橋を渡り、一足先に玄関の前に立つと、おどけたようにお辞儀をしてみせて言った。
「依子代お嬢様の、おなぁ〜りぃ〜」