都内・某所…、
拓也は由美から電話を受け、指定された場所へ1人で訪れた。
そこは、今は廃墟と化した倉庫。
夏の日差しがギラギラと照り付ける昼間でも辺りは静かである。
崩れた出入り口から中へと入って行く拓也。
雅美は心配気に遠くから様子を見ている。
ココへ来る前、雅美は拓也から…
「倉沢は来ない方がイイ。危険だし、何が起きるか分からないから」
…と、一緒に来る事を拒まれていた。
だからと言って、何も見ないでは同じフレンドリー仲間としては余計、不安になってしまう。
良子や真愛に連絡した雅美は単独で拓也の後を付けて来たのだった。
中はがらんどうの状態で、コンクリートの床には埃を被った木製のパレット数枚が散乱している。
辺りを見回す拓也。
誰もいない。
「由美、どこだ!? 来たぞ!」と大声で呼ぶ。
返事が無い。
辺りを見回しながら再度、由美を呼んでみる。
すると…、
「待ってたよ!」と言う声が背後から聞こえて来た。
振り返ると、そこに由美が立っていた。
拓也は言う。
「お前、場所を選べよな。こんな所で話し合いなんて、冗談キツいぜ」
「ゴメンね。彼がどうしてもって言うから」
「浮気相手はどこにいる? 姿見えじゃねえか」
「もうすぐ来るよ。私用で遅くなっちゃってるから」
「本当の事を教えてくれ。お前、本当に嘉村秋人と同棲してるのか?」
「してるよ」
「妊娠してるって聞いたけど、本当なのか?」
「本当だよ」
─なあーんて事だ、マジかよ!─
由美から事実を聞かされて、拓也は愕然となった。
気を取り直して、質問を続ける。
「同棲も妊娠も、お前の意志じゃねえんだろう?」
「意志じゃないって、どう言う事?」
「アキトに誘惑されて、仕方無く受け入れた…って事だよ。」
「どうして、そんな事言うの?」
「お前って、純情だし人がイイからだ。
そのアキトって野郎、それをイイ事に…好き放題に誘惑した」
この時…、
「変な言い掛かりをよ、付けんじゃねーよコラァ!」
背後から男の声がした。
振り返ると、3人の見知らぬ若い男たちがいた。
真ん中の長髪がアキトこと嘉村秋人だ。
右側のロン毛がヒロシ、左側のスキンヘッドがヨースケ、…いずれもアキトのワル仲間だ。
両方の睨み合いが始まった。
つづく