拓也が口火を切った。
「テメェが、由美を誘惑した嘉村秋人か?」
「だからァ、変な言い掛かり付けんじゃねえって言ってんだろうが!」
激しい口調のアキト。
拓也は動じない。
「何を言ってんだ!?
由美に手を出した事には変わりはねえだろう!」
「オメェに言っておくけどよ、由美と一緒に寝た事はな…同意の上なんだよ」
「どうせ、強制的だろ」
「だったら、由美に聞いてみろよ!」
拓也は由美に尋ねた。
由美は視線を合わせず、腕を組んだまま不機嫌な態度を取っている。
「違うよな由美。
お前、アキトにそそのかされたんだろう?」
「…」
由美は何も答えず、ツンとした態度である。
「何とか言ってくれ」
「…」
「由美!」
アキトが話しかける。
「遠慮するな由美!
ずっと前からキライだった…って言えばイイんだからよ!」
アキトの言葉に拓也は不安を感じた。
「本当なのか由美?」
「…」
「黙っていちゃあ、分かんねえだろう!?」
「…そうだよ」
ココで由美は、初めて自分の本当の思いを打ち明けた。
それは、拓也にとっては聞きたくはなかった事実である。
ずっと由美を信じ続けていた拓也は、動揺を隠し切れない。
由美は話しを続けた。
「私と良子が言い争ったのを止めた時、良子から迫られたよね?
どっちを取るかって。
拓也は両方とも切った時には…私は内心、ホッとしていたんだよねェ。
─グッドタイミングだよ。私から、別れ話しを持ち掛ける手間が省けた─
ってね。なのに、後から私に電話を掛けて来た。
─仲直りする─って聞いた時は…ウンザリしたんだよね」
「あの時はお前、喜んでたじゃねえか?」
「芝居してたの」
「俺を騙してたのか!」
「そうだよ! 私ィ、アンタの事は前からキライだったから!」
「由美…」
拓也は苦笑いして
「ウソだよな。俺はお前を信じてるよ」
ため息付く由美。
「拓也ァ、もう…イイ加減してくんない?
ウザいんだよテメェ!」
アキトが笑い出した。
「森山ァ、オメェって鈍いヤツなんだなァ!
由美は前からオメェの事を嫌ってんのによォ、全然気付かねえの?」
「テメェは黙ってろ、ボケ!」
つづく