花のやでは愛染がイヤーな感じの汗をかいていた。 ミント黄門の打ち合わせを終え花のやに戻ったところお客が待っていたのだがそれがよりによって増える膳の若旦那だったのだ。
「どうした太夫?いつものように横にきてはくれぬのかな?」
「あ…そう…でありんすでしたわ……」
複雑な気分で言葉も足元ももつれながら布団に横たわり手招きする増える膳の若旦那の横に鎮座する愛染…あきらかに怪しい。
「なんだか変だな。太夫?何か悩みでも?」
増える膳の若旦那はそう言いながら愛染を見た。 イケメンである。 声もいいし金回りもいい。ワザワザお金使って廓に来なくとも女に不自由するはずないのになぁ…などと考えていた愛染に増える膳の若旦那は微笑みながらこう言った。
「今日はおかしいですよ。出かけていたと聞きましたが外で何かあったのですか僕は貴女とお話したくて来たのに喋ってくれなくて淋しいですよ」
「…若旦那…そう言えば廓に来ても…その…コトに及ばないでお帰りになることが多々おありですよね。その……」
「おや、大胆な発言ですねコトに及んで欲しいということかい?僕はね、貴女があまり太夫ぶらない話し方をするのが好きなんですよ少しお国の訛りが入ったイントネーションが好きなんですよ」
「………ああ、そういうことか………」
愛染は納得した。
マリ餡ころ網と同じイントネーションで幼なじみ故に何処か面影があるのだろう……と。
「さ、太夫。お望みなら今宵はゆっくりと貴女を独り占めしましょう…」
増える膳の若旦那に押し倒されながら愛染は逃げ出すわけにもいかないし…。などと考えながら複雑な気分のまま身をまかすのでありました。
〈つづく〉