Killing Night Freaks/Chap.1-3

夢の字  2008-07-22投稿
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 開いていた生徒昇降口のドアを開け、校舎の中に踏み込んだ。月の明かりの届かない宵闇はのっぺりとしていて、息が詰まるような重圧を感じさせる。心を落ち着けようと深く吸い込んだ空気は外とは打って変わって冷たく、まるで異世界に踏み込んだような錯覚を覚えさせた。
 異世界。良いじゃないか。それこそが僕の望むものだ。此処ではない何処か。平坦に平凡な日々が続く退屈な場所ではない、興奮と熱狂に満ちた場所。強く、望む。そのための一歩を踏み出す。
 音を立てないように静かに、暗い廊下を進む。履き変えずにおいたスニーカーが申し訳程度に立てる靴音が、それでもいやに鼓膜に響く。一階。家庭科室や食堂など、特殊教室を主としたフロア。先程の“彼”の気配を探りながら、慎重に歩を進めていく。
 何も無いことを確認して、次へ。二階から上はは通常教室の集まりだ。一つの階に7クラス有る。一クラス40人だから、一学年に280人。三学年で840人になる……それが、昼ならば。普段はそれだけの生徒で賑わう筈の場所も、今は無気味なまでに静まり返っている。人が居ないだけでこんなにも雰囲気が変わるとは思わなかった。本当に、別の場所みたいだ。
 この頃には目が暗闇に慣れて来ていて、物の輪郭程度ならわかるようになっていた。些細な物でも人に見えたりする、こういう時が最も恐怖を煽り立てたりするものだけれども、今は好奇心の方がが勝っている。さしたる恐怖を感じる事なく、二階の探索を終えた。と、その時。

「…………っ」

 上から物音いや、声、だろうか。それは小さな、ともすれば自分の足音にも負けてしまいそうな程の音だったけれど、確かに耳に届いていた。

 きた。何か分からないけれど、分からないものがきた。膨らむ期待。知らず、鼓動が速くなる。音を立てないように静かに、けれど出来得るかぎりの最高速で音源へと急ぐ。
 階段を二段飛ばしで駆け上がり(多少喧しかったけれど仕方が無い)横目で異常の 無い三階を流し見ながら、最上階である四階に辿り着いた。聞こえた音の大きさから鑑みるに、恐らく音源は四階。はやる気持ちを押さえ、ゆっくりと歩き出す。
 四階。馴染みの有る一年クラスの有る階層。此処には他に生徒会室と、屋上へと続く階段が有る。既に物音はしない。けれど、確信がある。ここに、僕が望んだ非日常が有る――!

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