古い旅館で
永すぎる春を読んでいた時
ふいに大きな蜘蛛が入って来たことに気づいた
僕はこの休暇中は
殺生はしない
ことを試そうと思っていた
もちろん大小関わらずだ
僕は
新たな侵入者を防ぐために
二人きりになった
二人きりになって
気にならぬふりをしながら
とても本の活字に注目できず
とても緊張をしていた
これは蜘蛛と糸だ
試されているのだ
僕は果たしてこの蜘蛛のどこがイヤなのかを考えた
毒がある可能性か
はたまた僕の顔の上を通り過ぎることか
いくら考えても僕はどうしても二人で密室にいることが耐えうる選択肢は無く
時間をかけ
ドアの外になんとか誘導をした
これが二人の最良の道だ
そうして僕は
いつだって一人だ
僕はいつだって
最良の
一人の道を選択してきたんだ