桜は俺にとって初めての彼女だった。付き合いはじめてからすぐに、俺の世界は、桜でいっぱいになった。
桜が見るもの、触るもの、感じるもの。すべてを独り占めしたくなっていった。
異常。
そうだな。異常だったかもしれない。
桜のポケベルも平気で見たし、持ち物もチェックしていた。
好きだから、好きだから、好きだから…その気持ちが俺を狂わせていた。
桜は、俺のことを好きじゃなくなったのだろう。
高校を卒業し、俺は地元の企業へ就職が決まっていた。桜は地元の大学へ進学が決まった、と聞かされていた。
だけど。
高校卒業と同時に、桜は俺の前から姿を消した。
俺は、その現実を受け止められなかった。でもきっと…桜は俺のことを好きじゃなくなったんだ。
諦めなきゃいけない。前を向いて…。
桜を忘れよう。忘れよう。
忘れなければいけないんだ。
桜でいっぱいだった俺の世界は、灰色になった。
だめだ。俺は桜を忘れられない。