彼女と先週行った、カジュアルイタリアンの店で食事をする事にした。
どうやら、ここの店の気取らないアットホームな雰囲気が、
僕達の程好く親しい友人関係にはピッタリらしい。
『未來、ごめんね。なんか、無理に言って付き合わせちゃったかな?』
店員に案内された席に着くなり、彼女にそう言われた僕。
だから焦ってとっさにこう答えたんだ。
『そんな事ないよ。僕もユキちゃんの手術が大成功だったと聞いて、凄く嬉しかったし‥。』
『嬉しかった‥し???』
あ〜もうっ!!何て言っていいのか分からない!!
彼女に誤解されるのだけは嫌だ!!
『だから‥その‥‥僕も君に会いたかったんだ。』
言ってしまった。
パートナーのいる彼女に思わず言ってしまった。
早く話題を変えないと!!
『本当?!ならよかった!!』
僕の考えすぎか。
彼女が直ぐに何時もの笑顔に戻ったから、僕は内心ほっとした。
けど―\r
どうして彼女は、そう言ったのだろう。
よく考えてみたら、僕があまり楽しそうじゃない顔をしていたから、
彼女に気を遣わせてしまったんだって事に気付いた。
僕は感情を直ぐ表に出したりしない方なのだが、
この時ばかりは、彼女に気を遣わせてしまった事に、
僕は心の中で反省していた。
そして―\r
それ程、僕は彼女といる時はリラックスして、素のままでいられるって事なのだと自覚した。
だから―\r
別に“楽しくない”からじゃない。
だってユキちゃんの手術は大成功した訳だし。
理由を探せば、それはもっと別な所にあったんだ。
僕の―\r
もっともっと心の奥深い所にね。
けれど―\r
今此処でその理由を彼女に言ってどうなるというのだろう。
単なる自己満足になるだけなら、無理に打ち明けて気まずくなるよりは、今のままの親しい“友人関係”をキープしておきたかった。
それでよかった筈じゃないか―\r
オーディション会場で彼女と十七年ぶりに再会した時だって、
それでよかった筈だった―\r
初恋のヒトは―\r
過去に好きだったヒト―\r
今はただ―\r
それを受け入れなくては―