E国きっての大富豪…アースル・バーソロンと妻のサラーには1人娘がいた。
名前はジーナ。
とても可愛いくて、気立ての良い女の子。
だが、生まれつき病弱の身。
その為か、親しい友達がおらず、等身大の人形エリザベスを友達のように慕っていた。
17歳の冬、ジーナは大きな病に侵された。
しかも不運な事に、長くは生きられないと言う。
─私はもう、助からない。死ぬ。─
ジーナ自身、自らの余命を悟った。
でも、死ぬ事は怖くはない。
17年と言う短い生涯だったけど、とても幸せだったからだ。
悔いはない。
…ないけど、エリザベスの事だけが気になる。
「私の愛する人形…。
愛するエリザベスは、どうなるの? 不安だわ」
そこでジーナは両親に言った。
「お父様、お母様お願いがあります。
エリザベスを私だと思って大切にして下さい」
「何を心配しているんだジーナ?」
「私が死んでしまったら、エリザベスは1人ぼっちになってしまう。
今後どうなってしまうのか不安なの」
「安心なさいジーナ。
エリザベスを処分したり、余所なんかにやったりはしない。いつまで大切にするからな」
「ありがとう」
床に臥しているジーナはアースルの手を取った。
ジーナはその後、両親に見守れながら、息を引き取った。