あれから数十年以上の月日が過ぎた。
バーソロン家の屋敷は既になく、夫妻の行方も分からない。
人形のエリザベスは今、L市内のA骨董屋の陳列台に飾られていた。
今となっては古い人形だが、不思議な事に年代的な古さを感じさせない雰囲気を漂わせている。
見た目は美しいけど…、
「ホント、でけぇ人形だ。売れねえし、邪魔でしょうがねえな」
店のマスターは陳列品の整理をしながらぼやく。
─いつまでも置いてもしょうがない。─
マスターは人形の処分を検討していた。
そんな時、人形の買い手が現われた。
17歳の学生…ルーク・ハリーである。
店を訪れたルークはエリザベス人形を買う事をマスターに言った。
「この人形を売ってくれませんか?」
「構わないけど、この人形の事…どこで知ったのかね?」
「ネットのサイトですよ。何十年の前に作られた人形なのに、未だに古さを感じさせない。
等身大の立派な人形…って写真付きで紹介されていたんです」
「ヘェ、この人形はそんなに有名だったのかァ。珍しいもんだ」
こうして、人形はルークの手に渡った。
マスターの親父には何の価値も無いエリザベス人形も、人形やフィギュア集めを趣味とするルークにとっては宝物である。
モノが大きいだけでなく、美しい表情をしているのだから。
その愛らしい姿にルークを虜にしてしまった。
人形はルークのベッド近くの椅子に置かれた。
(等身大だから、座らされたと言ってイイか?)
1人暮らしで彼女のいないルークにとってはエリザベスはまるで、恋人か妹みたいな存在。
毎日のように人形に話しかけたり、キスをしたりするのが日課となった。
ルークは段々と人形への思いが強くなってゆく。
つづく