その日、小雨が降っていた。
最近警察署は忙しい。
ほら、また電話が鳴っているよ…
佐藤が一つの電話機の受話器を取り、しばらく話した後、デスクとセットの椅子に倒れるように座り、ふ〜〜〜っ
と長く息を吐く。
「また?」
デスクより少し遠くに置いてあるソファに座っている真奈が佐藤に聞く、
「うん、今回は俺を守ってくれ怖い。だとよ、まったく最近の妖怪は…60年前とは比べ物にならない位へちょい…」
佐藤が片手で顔を隠しながら呆れたように言った。
ここ最近“妖怪の誘拐事件”が起きていて、警察署には毎日事件の現状などを聞いてくる妖怪からの電話が鳴る
「それにしても妖怪の誘拐事件なんて前代未聞だぞ。一体犯人は何を考えているのかさっぱりだな。」
真奈の隣であぐらをかき、腕を組んでいる天狐じいが言った。
そしてまた佐藤の前で電話機が鳴る、
佐藤がブツブツ言いながら受話器を取り、
「はいこちら佐藤法律警察署ですが…… …あっ!?ちょっと詳しくお話しを伺いたいのでお手数ですが警察署まで来ていただきませんか?……はいっ!すみません、では。」
そう言って電話を切った。
「天狐じい、また面倒くさい事が起こりそうだぞ。ぬらりひょんだ、ぬらりひょんが動き出した。」
少し怯えにも聞こえる口調で言った
「ぬらりひょん?…マジかよ…ぬらりひょんが動いたら世界の危機が迫ってるって事だぞ…」
天狐じいもまた、小さな手で頭を押さえた。
それから30分位経った時、警察署のドアが叩かれた。
「世界の危機のお出ましか…」
そう呟きドアの前で意味不明な言葉を呟きドアを開いた。
ドアを開き入って来たのは、破れたGパンに肩まである青いエクステの付いた茶髪に、フードの付いた白い半袖のパーカーを着た二十歳前半の男性だった。
「初めまして、佐藤警部、私はぬらりひょんです。」
真奈はこの時まだ事態の重大さに気付いてなかった…