廊下をしばらく歩いたところで、ロイはぴたりと足を止めた。
こっちから?―\r
ロイは目を大きく見開いて、右側にあるレンガ造りの壁を見つめた。
来て下さい…
間違い無い、こっちから大きく声が聞こえる…―\r
そう思いながら、ロイはしきりに首を傾げて、壁を手で触った。
こちら側に入る場所って、他にあったかな…?―\r
ふと、ロイは何かを思いついたかのように、少量の魔力を手のひらから放出して、壁を撫でてみた。
すると、カチリ、という音と共に、レンガ造りの壁が静かに左右に開いて、奥へと繋がる廊下が現れた。
「すごいな…」
ロイはその仕掛けに驚きながらも、中に入って行った。
その瞬間、静かに、しかし、とてつもなく速く、レンガ造りの壁が閉じてしまった。
「…で、出られるよなあ、これ…」
ロイはその光景を見て、一瞬、心配になったものの、もうここまで来たら、と、腹を決めて、奥へと進んだ。
レンガ造りの壁は、古いのか変色はしているものの、ヒビや傷は一切無く、ランプの光は、廊下を昼間のように明るく照らしていた。「…すごいな、これ。魔法で廊下全体が保護してある…」
ロイは感心して、しきりに壁を触りながら、廊下の奥へと進んで行った。