花冠2

一月  2008-07-24投稿
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 銃口の先には呆然と立ち尽くす少女がいた。両手にはいっぱいの花を抱えている。まるで花の化身のような可憐な少女だった。
 少女の瞳に怯えの色が浮かんでいるのを見て、旅人はすぐに銃をしまった。
 両手を挙げ、ひらひらしてみせると、ほほ笑みながらこう言った。
 「失礼。狼でも飛び出してきたのかと思ってね。恐がらせて悪かった。ほら、もう何も持っていないから安心しておくれ」
 旅人の態度に安心したらしく、少女は強ばっていた体からふっと緊張を解いた。そして花びらが綻ぶよいな笑顔で、
 「私の方こそ驚かせちゃってごめんなさい。あなた見たところ旅の人ね。よかったら家でお茶でもいかが?これも何かの縁だし、旅のお話でも聞かせてくださらない?」
 少女は優しくも溌剌とした声でそう言った。
 これも何かの縁。その言葉に旅人もうなずいて、花畑のすぐ後ろにある小さな煉瓦造りの家に入った。
 少女は摘んできた花をそっとテーブルの上において、お茶を入れるためにキッチンへ向かった。
 すでに椅子に座らされている旅人は、少女の背中を見送った後、テーブルに置かれた作りかけの花冠とブーケに目を留めた。純白の花が清楚に輝いている。



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