父と母を
初めて旅行に連れ出した
スーツケースを引っ張り
先頭を歩く
いつまでも若いと思っていた父の
隠しきれない帽子からはみ出した
いくつもの白髪を見つけ
ああ、
ごめんなさい
ごめんなさい
と思った
大自然を歩き疲れて
部屋に戻り
さぁ明日はどこ行こうか
と二人で仲良く考え
七時にはいびきをかいて寝てしまった親の
部屋の前に並ぶ二つのスリッパを見て
こうして
どうしたって先にいなくなってしまうんだ
と思って寂しくなった
今読み終えた蟹工船の感動を伝えようと思ったのに
もう眠ってしまっていたんだ
もう僕は
父や母のような相手を
見つけていかなくてはならないのだと
仲良く並ぶスリッパが
僕のあしもとで
うったえていた