「ふーん」
ため息付くルーク。
この人形の素晴らしさを誰も分かってくれないのかと不満が出てしまう。
ジッとエリザベスを見つめる。
「ま、イイか。
この人形の素晴らしさはフツーの人間には分からないから」
ルークは自分を慰めるようにこう呟いた。
ディックとティムは夜道を歩きながら会話していた。
話題は勿論、ルークの事についてである。
「呆れたぜ、ルークにはよォ。僕の恋人だなんてぬかしやがって」
ティムは苦笑いしながら、
「俺は大体、予想は付いていたぜ。
─どうせアイツの事だ。人形を自分の恋人だと言うに決まってる─
ってね」
「アイツの人形オタクにはマイッタよな」
「ありゃ、殆ど…病気だぜ」
「おい、ジミー」
「何だい?」
「お前、ルークに誰かイイ女の子を紹介してやれよ。このままじゃ、アイツはダメになっちまう」
「俺も今、それを考えていたところ」
ティムが言う。
「とびっきりイイ女の子を紹介してやれよ」
「大丈夫、任せなって」
夜…、
ルークは机に向かって教科書を読んでいた。
好きな音楽聞きながらの勉強は、意外とはかどるものである。
部屋の片隅には、エリザベス人形の姿があった。
椅子に座ったままうつむき加減の状態で置かれていた。
既に異変は始まっている。
人形は突然、首が動き出してルークの方に振り向いた。
エリザベスが優しい笑みを浮かべ、こちらを見ているなんてルークは気付いていない。
教科書と音楽に夢中になっているからである。
カタッと言う音に気付いて振り返った時は人形は元の状態のまま。
エリザベスが動き出すのはルークが寝ている時。
ベッドに歩み寄ったエリザベスは床に垂れ下がった掛け布団をソッと掛け直したり、時にはルークの寝顔をソッと見入ったりしていた。
朝、ルークが登校する時なんか、窓のカーテン越しから見送っていた。
等身大の人形が動いているなんて、ルークは全く気付いていない。
つづく