『えっ‥‥???』
一瞬、トキが止まったかの様に、
僕と彼女は見つめ合ってしまった。
彼女は驚いている僕の顔を、
ただ、黙って見つめているだけだった。
まるで、今の一言に対しての僕の出方を窺っているかの様だ。
『こちら、海老のバジル風味でございます。』
僕達と変わらない年代に見えるウエイトレスは、
少し申し訳なさそうに、テーブルの上に料理を置いた。
『びっくりした?!』
先に彼女の方から口を開いた。
『うん。少し。』
少しどころか、内心かなり驚いていた。
何で?!
彼女と“ちんちくりんのハゲオヤジ”との間に一体何があったのか?!
聞いてみようか?!
いや‥‥‥。
好きな男と別れたばかりで傷心の女のコの心の中に、
部外者の僕が土足で入り込む隙は無い。
『‥‥‥き‥‥っ‥んだ‥‥‥。』
彼女の言葉が――
『えっ?!』
旨く聞き取れなかった――
次の瞬間――
『好きになってたんだ‥‥‥。』
彼女の目から――
大粒の涙がポロポロこぼれ落ちた――
小学校一年生のトキから、気の強い女のコだった彼女は――
多分、今も気の強い女のコ――
そんな彼女をこんなにまで悲しませ、傷付けたヤツをは許せない――
『ぐしゅっ。ち――ん。ご、ごめっ。何か悔し涙出ちゃって‥‥。』
『エリカちゃん。僕は、こんなダサイ男で、エリカちゃんが辛い思いをしていても、気の利いた事ひとつ言えないけれど、話を聞いてあげる事なら出来るからさ。』
『ありがとう。未來。』
彼女の一瞬の笑顔を見れたから、
僕は、少しだけホッとした。