銀河元号一五四一年第二期一日(修正太陽暦四月一日)・フリースユニオン六軍総合戦略調整会議は、第四次作戦協定基本要綱を策定し、その中でギャームリーグを滅ぼす攻勢作戦《1号作戦》を盛り込んだ。
同期二0日(修正太陽暦四月二0日)、1号作戦は《三叉矛作戦》として具体化された。
その作戦の内容は、
1・中央域戦線にてこれまでにない物量を投入した大攻勢を実施する《フライング=ウォール作戦》
2・ギャームリーグ三宙邦本国のアイアン=トライアングル要塞線攻略を目指した《紅夷大砲作戦》
3・そして、ギャームリーグ勢力圏を大きく迂回してその背後から本国を狙う《オペレーション=ヨシツネ》の三つを柱としていた。
迂回部隊には、当然これを日頃から提唱していたガニバサの《ネオフリート》が中核に充てられた。
同年第三期四日(修正太陽暦九月四日)・遂に作戦は開始された。
太陽系外縁に集結していた中央域作戦部隊(純戦闘艦艇四00万隻基幹)は三群に分かれてギャームリーグ機動部隊に襲いかかった。
それから一週間後、アイアン=トライアングル要塞線前面にフリースユニオンの攻略部隊が出現した。
前回の大敗の教訓から、今度は恒星間戦略砲《三鬼眼》対策の為、エネルギー飽和膜化・拡散化システム運用に三千隻の巨船が用意されていた。
両戦線では激しい戦いが繰り広げられ、そのどちらに置いてもフリースニユオンは甚大な犠牲を出しまくった。
だが、これこそフリースユニオンのお家芸と化した陽動作戦の最高傑作と言うべき物であった。
更に一週間後、宙図にすら乗らない星系・GX6615に集結していた《ネオフリート》が、アイアン=トライアングルでの敵味方の砲火を遠目に見ながら密かに出撃を開始した。
その戦力は、純戦闘艦艇一二万隻を中心に、合計七二万隻・参加人員九六0万人から構成されていた。
ギャームリーグ三宙邦本国から遥か外側を航行するその旅程は、推定で最短一八00光年に及び、しかもその九割が探査すらされていないと言うのだから、過酷を極めた行軍となるのは確実だった。
仮に順調に行っても、到達予定宙域に達するのに一年半はかかると考えられており、それは地球時代のアレクサンダー・チンギスハーン・毛沢東の敢行した大遠征に匹敵する冒険であった。