旅人の話は尽きることなく、この地を離れたことがない少女にとっては、どれも夢物語のようだった。
瞳を輝かせてさも嬉しそうに楽しそうに話を聞く少女を見て、旅人もまた時間を忘れて話続けた。
そうしている間に日は西に傾き始め、母親が町から帰ってきた。
少女に似て可憐で、優しげな女性だった。
日が暮れかけていることを知り、慌てて旅人が立ち上がると、母子から泊まっていくように勧められた。
「いや、それは申し訳ないので…」
「いいじゃないの。急ぐ旅でもないんでしょう?ウチにお客さんが来るのも久しぶりなの。是非泊まっていって下さいな」
母親はのんびりとした口調だが、自分達の希望を曲げる気はないようだ。
仕方なく旅人は好意に甘えることにし、直後に帰ってきた父親も、話を聞いて二つ返事で快諾した。
こうして快活な少女と、美しい母親と、優しげで常に笑みを絶やさない父親に囲まれて、旅人は久しぶりに穏やかな団欒の中で過ごした。
手厚いもてなしを受け、旅人はすっかり旅の疲れを癒されて、深く心地よい眠りの中に落ちていった――