翌朝、耳元で草がさわさわと風にそよぐ音で目が覚めた。
うっすらと目を開けると、透き通る青空が広がっていた。寝る前は確かに天井だったはずだ。
勢い良く体を起こし、辺りを見回して旅人は愕然とした。
旅人が泊まった家は、一晩の内に崩れ落ちて廃墟と化していた。
屋根が崩れ落ちて、ぽっかりと穴の開いた天井から青空がのぞいている。
傾いた家の重圧でガラスが砕け散っている窓からは、庭の白い花畑が見える。
床も所々朽ちて抜けており、床下から草が伸び放題になっていた。
旅人が横たわっていた寝台の周りにも草は茂っている。
「一体何があったんだ…」
昨日までは確かに普通の家だったというのに。
その荒れ方は、放置されもう何年も経過した状態だった。
「皆はどうしたんだ?」
旅人は立ち上がり、腐った床板に気を付けながら、家族を探した。
小さな家の中はすぐに探しおわった。しかし、どこにも家族の姿はない。
それどころか、室内は完全に荒れ果てて、人間が住んでいる痕跡はまったくなかった。
何が起こったのかわからず、旅人は茫然と立ち尽くした。
そこは昨夜、あの優しい家族に囲まれて団欒を過ごした場所だった。