ルークとキャサリンは国立美術館で開催中の話題のアート展示会を観た後、街の郊外にある湖に出かけた。
季節は真冬なのに、今日は珍しく暖かい。
2人は手漕ぎのボートで湖へ出た。
回りには沢山のボート。
乗っているのは若いアベックばかりである。
ルークは一生懸命、ボートを漕いでいた。
キャサリンは片手で水面を掻きながら自分の身の上話しをした。
「家族は、別居している兄と両親の3人。
父は貿易会社に努めていて、いつも忙しいの。
なかなか私と話す機会がないけど、凄くイイ人」
「君の将来の夢は?」
「デザイナーになりたいと思ってるわ」
「ファッション関係の方にかい?」
「まあ、そう言った分野かしら?」
「なれるとイイね」
「自信ないけどね」
「君なら、出来ると思うよ。着ている洋服のセンスもイイし」
キャサリンの顔がほころんだ。
「ありがとう。そう言われると、凄く自信が付くわ。ところで…」
キャサリンは急に真面目な表情になって質問を続けた。
「ルークは…生身の女の子には興味ないって聞いたけど、本当なの?」
「それ、誰から聞いたんだい?」
「ジミーからよ。
彼、すっごく…アナタの事を心配してたの。
ルークは人形ばっかり目が向いて、生身の女の子には興味を持たなくなっている。
このまま放っておいたら、大人になっても生身の女性との恋をしなくなる男に成り下がってしまうんじゃないかって」
ルークはしんみりとした表情で答える。
「小さい頃、近所に同じ年頃で…凄く意地悪な女の子たちがいたんだ。
僕はよく、彼女たちに馬鹿にされてね。
以来、生身の女の子には見向きしなくなった。
人形に興味持つようになったのは、親父が知り合いから買ったアンティックドールを手にしたのがキッカケだったかな?」
「それ以来、人形にしか…興味を持たなくなったのね?」
「まあ、そんなところだね」
「今も、そうなの?」
「今は違うよ。
君と出会ってから、気持ちが変わった。
生身の女の子に興味を持つようになったんだ。
自分で言うのも変だけど、少しはマシな男になったかなあって思ってる」
つづく