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ユキちゃんのお見舞いに行く当日までに、
数日前の出来事が、
まるで夢でも見ていたかの様に、あっさりと僕の目の前を通り過ぎて行った。
彼女と会うのも、あの夜以来だった。
あの夜の事を、彼女はどう受け止めているだろう。
単なる人恋しさ?!
お互いの寂しさを紛らわせる為?!
少なくとも、あの夜の僕達は、お互いに激しく求め合っていた。
まるで―\r
何かの呪縛から解き放たれた解放感から、
封印された引かれ合うお互いの気持ちが、
一気に爆発した恋人同士の様に――
十七年間封印して来た僕の一方通行のこの思いは、
“彼女に届け”と言わんばかりに彼女の中で、一気に弾けてしまったけれど、
傷心の彼女の心が癒えるまでに、
まだ少しは時間がかかると思うから――
“ちんちくりんのハゲオヤジ”のコトを好きだった彼女が、
これからもやっぱり“ちんちくりんのハゲオヤジ”のコトを忘れるのに時間をかけて――
勿論、その間の僕の気持ちは、
行きたい場所が分かっていても行けない宙ぶらりんのままだけど――
それまで、この思いは少しの間、静かに胸にしまっておく事にするよ。
まだハッキリと言葉で伝えてはいない、この気持ちを。
『ユキちゃん、あたし達がお見舞いに行ったら、きっとビックリするわよ!!』
『うん!!そうだね!!』
それから、待ち合わせ場所で落ち合った僕達は、
ユキちゃんに早く会いたくて、病院へと急いだ。