あなたと踊るワルツは…綺麗でした。あなたとかつて踊ったこの場所は今も健在です…。ただ変わったのはソコから見える景色と…あなたがいないということです。
1982年10月…灰色の空の下、風なびく丘の草原の上に1人の老人が立っていた。彼は「ジェン・バショフ」。数年前からか、彼は毎日のようにこの町外れの草原に来ては 町を見下ろしていた。
町の住民からは「草原の守人(もりびと)」と呼ばれ、変わり者扱いされていた。
「あの〜…」
「!!」ジェンはビックリした。突然声をかけられたからだ。変わり者扱いされて始めてから自分からジェンに声をかけようとする者がかなり減っていた。しかもその人は二十くらいの女性だった。
(な…何年ぶりじゃろうか…こんな若い女性から話しかけられたのは…)
ジェンは動揺していた。しかもその女性はかつてこの草原の上でワルツを共に描いたあの人によく似ていた。
「あの〜…いつもここにいらっしゃいますよね?何をしているんですか?もしよかったら教えて下さい。」女性はニコニコしながら言う。
「え!?あ、あぁワシがか?…うん、ちょっと……その…こ、この草原にもっと飾りがあったら素敵だと思って…のう。」ジェンは恥ずかしがった。何年もかつて好きだった女性が忘れられなくて…なんて話をするのが。
しかしその女性は目を輝かせて
「素敵です!私もこの草原、前から活気が無いなって思っとんです。もしよろしければ、どんな草原を描きたいのか聞かせてくれませんか?」と言った。
ジェンは驚きとどこか懐かしさを感じた。そしてジェンはゆっくりと、草原に腰掛けながらあの女性との事を話し始めた。…つづく。