僕は君の未来を永遠(トワ)に。<57>

麻呂  2008-07-30投稿
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* * * * * *

病室に入ると、ユキちゃんは、ベッドの上で、何やら紙に書いていた。


熱中しているのか、僕達が病室へ入っても、こちらから話しかけるまで全く気が付かない様子だった。



『ユキちゃん、こんにちはぁ〜。』


そう言ったエリカちゃんの声に気付き、下を向いていたユキちゃんは顔を上げ、僕達の方に視線を向けた。



『未來兄ちゃんと、エリカお姉ちゃん!!』


ユキちゃんは、凄く嬉しいといった感じで、声を弾ませてそう言った。



『ユキちゃん、何書いてるの?!』


僕がユキちゃんの手元に視線を移すと、


『ダメ!!まだ書いてる途中だから!!』


ユキちゃんは、それをサッと枕の下に隠してしまった。



『ユキちゃん、よく頑張ったね。

お姉ちゃんとお兄ちゃんも、ずっとユキちゃんの事、頑張れ〜って応援してたんだよ。』


エリカちゃんは優しくユキちゃんの頭を撫でた。


母性本能ってヤツなのかなって思った。


『うん!!ありがとう!!未來兄ちゃんの“おまじない”が効いたのかもね!!』


ユキちゃんは元気にそう言って笑った。


『ユキちゃんが“ひとりあやとり”を教えて欲しいって言ってたって、エリカちゃんから聞いたよ。』


僕はジーンズのポケットから、愛用の極太の赤い毛糸を取り出し、ユキちゃんの為に用意しておいた、もう一本をユキちゃんに渡した。


そして、“ひとりあやとり”のやり方を教えてあげた。



『わぁ!!面白い!!ユキにも出来たよ!!未來兄ちゃん!!』


意外な物が受けるんだなって思った。


今時の十歳の女のコにとって、こんな毛糸一本で出来る“ひとりあやとり”の様な、古くさい遊びが、逆に何処か新鮮さを感じたのだろうと思った。



『よかったね、ユキちゃん。“ひとりあやとり”が出来るようになって。』


側でエリカちゃんが微笑んでいる。



『ユキ、早く退院して、学校行きたいな。そしたらみんなにこの“ひとりあやとり”を教えてあげるんだ。』



ユキちゃんは得意気にそう言った。

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