『未來、空見て!!凄い星がいっぱい!!』
ふと立ち止まり、彼女にそう言われて空を仰ぐと、本当に今日は星がハッキリ見える夜だった。
『未來、あれが夏の大三角形で、天の川はその間を流れているのよ。』
『天の川?!見えないよ?!何処に?!』
『んもうっ!!全然ロマンチックじゃないのね!!でもあそこに天の川があるのよ!!』
久々に、気の強い彼女を見た。
傷心の彼女が、少し元気を取り戻してくれたのかな。
そう思ったら、僕はやっぱり嬉しくなった。
『あたし、織姫と彦星の話じゃないけど、未來となかなか会えなくなるの。』
慌てて彼女の横顔を見たら、それはふざけて言っているんじゃないって分かった。
『な‥‥どうして?!』
声が少し上擦った。
『未來と十七年振りに再会する少し前に受けていた、ある劇団の“劇団員募集”のオーディションに受かったんだ。』
『うん。』
『結構有名な劇団だから、研修生として入るのも、なかなか難しいの。だから受かったと聞いてあたしもビックリよ。』
『へぇ。よかったじゃん。』
よかったじゃん――
そう言った後の僕の顔は、きっと引きつっていたと思う。
暗くて僕の横に立つ彼女には見えていなかったと思うけれど。
『なるべく早く行こうと思う。』
『場所は何処なの?!』
『東京よ。』
彼女の夢を叶えるには、僕はどうすればいい?!
何か出来る事はある?!
今日は星がハッキリと見える夜だから、
流れ星でも待つ事にする?!
傷心の彼女は、もう心の傷が癒えたかな?!
それには僕は必要なかったね?!
僕は君に何もしてあげられないの?!
最高の友達としてさえも、何も協力出来ないの?!