目に留まったフィギュアに―\r
男の頭で自分でも考えられない機転のひらめきがスパークした!
(立つのです雄大―)
力なく床にうずくまったままの巨漢(体脂肪46%)の耳に、ふと導きの声が響いた。
彼がその声の在りかに目をやると―\r
(今こそこの世にはびこる悪に立ち向かう時―さあ勇気を振り絞って)
《ユカリちゃん》がこちらを見ているではないか!
(私が貴方に力を与えましょう)
『うほっ』
その巫女姿は凜として神々しく―\r
(さあ闘いなさい―私が貴方についています)
『うほっ』
それは死にかけたヤツのフィギュア魂に火をともし、鼻息を荒くするのに充分だった!
一三雄大は見た。
床に転がる《ユカリちゃん》の両目から放たれた光が己の体を包み込み―\r
彼に名状し難いエネルギ―を与えた事を!
『うおぉぉぉぉあああああああぉぉぉあぉっユカリちゃあぁあぁぁぁぁぁんっ!!!』
凄まじい雄叫びと共に―\r
ヤツは―立ち上がった!
そして―\r
ビリビリビリビリッ
いきなり両手で己のダサダサのTシャツを引き破ると―\r
そこにはあらゆるフィギュアがプリントされた自家製のシャツが現れた!
そして―その胸の辺りには―\r
《I LAVE PEACE》
おおっ!
スペル一字違う―\r
でも―何かスゲェ
『彼を解放してもらおうか』
毅然として一三雄大は、今までの成り行きを呆然と眺めていた《RA=MEN》の連中に言い放った。
『さもないと―少々痛い目に合う』
『何だとこの豚が』
再び小馬鹿にした視線でリーダー格の情報員が22口径を雄大に向けたが―\r
『豚じゃない―フィギュアマスターだ』
フィギュアマスター!?
何かスゲェ。
だが、リーダーの男の目配せに応じて、仲間の一人が背後から襲いかかる!
しかし!
『もうっ!お兄ちゃんたら!!!』
バシュッ
正確に放たれた二本の指が、真後ろの男の喉仏を見事に捕え―\r
『ぐはっ』
相手はそのまま床にへたり込んで倒れてしまう!
『ぐっ―なんだコイツ』
信じられない事態にリーダー格の情報員は歯ぎしりし、顔を歪ませた。