エリザベスドール(9)

ぐうりんぼ  2008-07-30投稿
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ジミーは一緒にルークの自宅へやって来た。

人形は何事もなかったかのように物置にあった。

触っても、ピクリともしない。

体を揺すっても同じ。

ルークは首を傾げる。

「おかしいな」

頭を掻きながら、眉間にシワを寄せるルークをジミーは腕組んだままジッと見つめている。

「どうだ?」

「うーん」

ジミーは人形の肩を叩きながら言った。

「よーく見ろよ。
コイツは図体がデカい、ただの作り物だ。
生き物なんかじゃない」

「でもさっき、動くところを見たんだ!」

「錯覚だよ錯覚!
人形ばかり夢中になって、錯覚起こすんだ!
しっかりしろよ!」

「しっかりしてるよ!
でも実際…」

「もうイイ、何も言うな! イイか!?

大体…こんな薄気味悪い人形を置いているのが、そもそもの間違いなんだ! 分かるか!?」

「分かるけど…。
じゃあ、どうしろって言うの?」

「悪い事は言わん。
思い切って処分しちまう事だ」

「処分しろなんて…」

「なに迷ってんだよ?」

「迷ってない」

「この際、人形に対する変な感情なんか捨てろ。そうしないと、いつまでたっても悪い夢ばかり見てしまうぜ」

「…」

「しょうがねえな!
俺はもう、帰るからよ。ついでにコイツ、捨てて来てやるよ」

ジミーはそう言って、人形を自分の軽トラックに積んで帰った。


─エリザベスが、いなくなった─

1人ポツンと残ったルークは大切なモノを失ったような淋しさを覚えながらも、肩の荷が降りてホッとした気分に浸った。


吹雪の中、ジミーは街の郊外の薄暗い森にやって来た。

適当な場所にクルマを停める。

さっそく、ジミーは荷台に縛り付けていたロープを解くと、人形を抱えて路肩の方へ歩み寄った。

「どこの馬鹿が作ったんだ、こんなデカい人形!薄気味悪いぜッ!!」

ジミーは吐き捨てるように言って、人形をガードレールの上から崖下に放り投げた。

「♪〜♪〜♪」

荷台を整理したジミーはクルマに乗り込み、缶コーヒーで一息付いた。

カーラジオからジミーの好きなラップの曲が流れている。

クルマを走らせようとした時、正面に目を向けたジミーの背筋が凍り付いた!

フロントガラスの向こう側に、物凄い形相でこちらを睨むエリザベス人形の姿があった。

吹雪の中でジミーの断末魔の叫び声が響く。


つづく



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