ジミーは一緒にルークの自宅へやって来た。
人形は何事もなかったかのように物置にあった。
触っても、ピクリともしない。
体を揺すっても同じ。
ルークは首を傾げる。
「おかしいな」
頭を掻きながら、眉間にシワを寄せるルークをジミーは腕組んだままジッと見つめている。
「どうだ?」
「うーん」
ジミーは人形の肩を叩きながら言った。
「よーく見ろよ。
コイツは図体がデカい、ただの作り物だ。
生き物なんかじゃない」
「でもさっき、動くところを見たんだ!」
「錯覚だよ錯覚!
人形ばかり夢中になって、錯覚起こすんだ!
しっかりしろよ!」
「しっかりしてるよ!
でも実際…」
「もうイイ、何も言うな! イイか!?
大体…こんな薄気味悪い人形を置いているのが、そもそもの間違いなんだ! 分かるか!?」
「分かるけど…。
じゃあ、どうしろって言うの?」
「悪い事は言わん。
思い切って処分しちまう事だ」
「処分しろなんて…」
「なに迷ってんだよ?」
「迷ってない」
「この際、人形に対する変な感情なんか捨てろ。そうしないと、いつまでたっても悪い夢ばかり見てしまうぜ」
「…」
「しょうがねえな!
俺はもう、帰るからよ。ついでにコイツ、捨てて来てやるよ」
ジミーはそう言って、人形を自分の軽トラックに積んで帰った。
─エリザベスが、いなくなった─
1人ポツンと残ったルークは大切なモノを失ったような淋しさを覚えながらも、肩の荷が降りてホッとした気分に浸った。
吹雪の中、ジミーは街の郊外の薄暗い森にやって来た。
適当な場所にクルマを停める。
さっそく、ジミーは荷台に縛り付けていたロープを解くと、人形を抱えて路肩の方へ歩み寄った。
「どこの馬鹿が作ったんだ、こんなデカい人形!薄気味悪いぜッ!!」
ジミーは吐き捨てるように言って、人形をガードレールの上から崖下に放り投げた。
「♪〜♪〜♪」
荷台を整理したジミーはクルマに乗り込み、缶コーヒーで一息付いた。
カーラジオからジミーの好きなラップの曲が流れている。
クルマを走らせようとした時、正面に目を向けたジミーの背筋が凍り付いた!
フロントガラスの向こう側に、物凄い形相でこちらを睨むエリザベス人形の姿があった。
吹雪の中でジミーの断末魔の叫び声が響く。
つづく