花冠8

一月  2008-07-30投稿
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「きっと誰もこなくなって寂しかったんだろうな。久しぶりにお客さんが来て嬉しかったんだと思うよ」
マスターの言葉を思い出しながら、旅人は森の道を歩いていた。
薄暗い道から急に開けた場所に出ると、真っ白な光のなかにあの花畑が揺れていた。
旅人はおもむろに花畑の中程まで分け入っていった。そこは昨日、少女が立っていた場所だった。
花々に埋もれて、小さな墓石が3つ並んでいる。
積もっていた枯葉などを払ってきれいにしてやると、町の花屋で作ってもらった純白の花冠を少女の墓石にかけてやった。
爽やかな風が森を吹き抜け、花畑が一斉に踊った。
旅人は祈りを捧げ、昨夜の例を言うと立ち上がった。再び風が鳴った。
旅人は歩きだした。風に揺れる花が手を振っているように見えた。
旅人の肩には一枚の白い花びらが乗っていた。
森を抜け薄暗い木々のトンネルを抜けると、再び眩しい光に包まれた。
「海だ…」
目前に広がる青い水平線。その時、森から一陣の風が吹き、肩から舞い上がった花びらから小さな声が耳をかすめた。
「ありがとう…よい旅を」
旅人が振り返ると一瞬若い新郎新婦の姿が見えた。
「有難う。お幸せに…」
彼は微笑み、旅立った―

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