* * * * * *
エリカちゃんが東京へ飛び立つ日――
僕は彼女を見送る為、一緒に空港まで付き合う事になっていた。
『未來、本当に空港まで付き合ってくれるの?!』
『勿論!!僕ね、結構空港って好きなんだよね。小さい頃を思い出してさ。』
『小さい頃?!』
『うん。よく父親に連れられて、空港に飛行機を見に行ったから。』
『へぇ。そうなんだ。』
小さい頃は、飛行機が見られるという事に凄くワクワクしていたっけ。
あの頃の純粋で素直な気持ちで今もいられたら、きっと僕はこんなに無理をしていないだろう。
何時からか、僕達は大人になって、言いたい事も言えずに黙る事を覚えてしまったのだ。
もっと早くに―\r
もっと素直に―\r
そして―\r
もっと正直に―\r
自分の気持ちがなれていたら―\r
きっと―\r
今の状況が違っていたと思うんだ――
僕達は、お互いに、窓際に向かい合って座っていた。
『あは。何かこれからあたし達、離れ離れになるなんて、信じられないね。』
彼女はそう言った後、小さく笑った。
『うん。何か、これからちょっとした小旅行に出掛ける気分だね。』
悲しい気持ちを隠して僕もなんとか笑ってみた。
頑張って楽しい話題を持ちかけたりした。
悲しいのに笑ってる。
泣きそうなのに笑ってる。
だって―\r
気を緩めたら―\r
泣いてしまいそうだったから――
『エリカちゃんが女優なら、僕はお笑い芸人、今度は本気で目指してみようか!!』
『あはははは。またう〇こ漏らしそうになっても、あたし知らないからね!!』
このまま、この時間が続けばいいと思った――
彼女と離れたくないって――
僕の心の中の叫びが虚しく響いた。