「うーん……」
しかし、僕の目的、か。実際の所なんなんだろう。特別への憧憬。平凡からの脱却。普通の生活では満たされない心の充足の為。有るには有るけど、具体的なビジョンが無い。厳密に、これと言った望みはないのだ。例えばそう、マラソンか何かで、進むべき道はわかっているのにゴールが見えてこないあの感覚。それによく似ている。
「せっかく受験終わったばっかりだってのに。せめてあと二年待てない?」
「誰が進路の話してるのよ」
「うーん、そだね」
ゴールが見えないなら電信柱を目標にするしかなくて。で見えている電信柱といったらこれしかない。笑えるほど単純明快な理由で口に出す、とりあえずの指標。
「目下、君と仲良くなることかな」
ようやく見つけた、“特別”への足掛かり。これをみすみす逃す手は無い。
「結婚を前提としたお付き合いを視野に入れたお友達から始めましょう、ってことで、是非」
「……ふざけてる?」
「ほんき」
「…………バッカじゃないの」
「一概には否定できない」
「殺すわよ」
「今まさに死にそー」
やべ、ふらふらしてきた。血が足りてない。今襲われたらひとたまりもないぜへっへっへ。笑い事じゃないけど。ゆ、輸血! 衛生兵、衛生兵ーっ!!
「……違うわよね。こんなふざけた奴。もしそうだったら私……」
「んい?」
「何でもないわよ! あーあ、バッカみたい」
「あれかな。“この胸のときめきはまさか恋!?”みたいな、そんな葛藤抱いてる?」
「バッカじゃないの」
「さっきからそればっかり」
いい加減飽きてくる。ボキャブラリが貧困。たまにはエスプリの効いた返答を所望する所存であります変な日本語。なんて考えてたらやっぱり口に出てたみたいで、物凄く怒られた。ちぇ。