こんにちは―＼r
少し裏返っているような、でも慎ましい女性らしさが表れている大人の声。今は懐かしい、誰よりも近い距離で聞いていた優しい声。
残念ながらこの時は僕に向けられて発してはいなかったのだけれど。
二回目に彼女に会った時だ。近くのスーパーで彼女を見かけた。近所の人とあいさつをしていたのだろう。
初めて彼女の声を聞いた。初めて彼女の顔を見た。
客観的に見て、彼女は普通の子だった。僕が恋に落ちるにはじゅうぶんだったけど、誰が見ても美人というわけじゃない彼女の外見に、僕はむしろ感謝した。
どんな子なんだろう。もっと知りたい。
自分の事を知ってもらって好きになってもらう自信は全然なかったから、この時も、見かけただけで終わるはずだった。
ところが僕はまた後をつけて歩き出したのだ。何を考えているんだろう。例の歩行者信号のところまで行けば…なんて淡い期待をしながら。
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