蒸し暑い夏の日。
午前10時を過ぎているが、私はベッドの上に寝転んだまま、掛けていたタオルケットをはいだ。まだ夢の中から確実に抜け出せないでいる。
平日にこんな時間まで寝ていられるのは大学生の特権だろう。
とはいっても大学4年生の私に、こんなことが許されるのは、あと少しなのだが..。
段々と意識がはっきりしていくなか、耳をすましてみる。
私の家の近くには、私の出身校でもある中学校があり、今は体育の時間なのだろう。生徒たちの声やボールの音が聞こえてくる。
しばらく聞いていると、ピピッとホイッスルが鳴り、先生が指導する声が聞こえてきた。何を言っているかは聞き取れないが、声の主はすぐにわかった。
中澤先生だ。
起きてすぐに先生の声が聞けたので、私は顔には出さなかったが、とても嬉しくなった。
『これで今日も楽しく過ごせる。』
そんなことを考えながら私はやっとベッドから起き上がった。
つい先月まで、私はこの中学校で教育実習をしていたのだ。2年生の国語科を担当していて、中澤先生も同じく2年生を担当していた。
私は今、中澤先生に片想い中なのだ。