でも、その時の僕はあまり分かっていなかった。
「じゃあ僕は亜紀さんのこと見捨てられないから、そばに居てあげる。家がそばだから当然なんだけど。」
「えっ？」
「それとも、他にもそばにに居てくれる人がいる？」
「ううん、裕樹くんだけだよ。そんなことを言ってくれるのは」
「じゃあ決まりだね？僕たち付き合うことにしよう」
彼女は、少し考え込んでいた。
「…前付き合っていた人と別れたのは、やっぱり家の事があったからなの。自分に余裕がなくなってきちゃって。だから、私、男の人と付き合う自信が無いのよ」
「亜紀さんに迷惑かけないようにするから。家も近いんだから、絶対なんとかなる。もっとお互い知り合えば自信も付くって。」
「そう…かな。」
「そうだって！こんな事言うのは僕だって亜紀さんが初めてだよ。僕、頑張るから！」
また考え込む亜紀。 少し間があってから、「じゃあ、よろしくおねがいします。」
「よぉ〜しっ！」
こうして僕らは付き合うようになった。
亜紀は本当に忙しかった。実際なかなか会える日が無く、月に2、3度しか一緒に出かけられない事が腹立たしい事もあった。
公園で話す事もあったけど、毎日電話した。話すことは、その日の他愛の無い出来事や、恋愛感、世の中の正義について。
たくさんの事を僕は亜紀から学んだ。亜紀の事を僕は尊敬していた。最初から。そして今でも…。
自分が好きだと思える相手を尊敬する。今まで知らなかったけど、それはとても大切なことなんだと思う。
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