「ちょっと顔貸せや」
黒木は大和に言った。その頃、翔人は一人体育館でシュートを打っていた。
「あっ、いたいた。」
翔人を見つけた美咲がかけよってきた。
「大和の事、気になってんでしょ?」
「あの人、悪い人じゃないと思うんですよ・・」
美咲はそれを気にしてか、口を開いた。
「大和はね、バスケ部の後輩が三年の黒木って人に絡まれた時、体を張って守ったんだ。」
翔人は黙ってしまった。
「でも黒木は全てを大和のせいにした。学校はそれを受けてバスケ部をつぶしたの。」
翔人は事実を知り、言葉が出なかった。
「あいつも、根っから悪いわけじゃないんだ。ただ、バスケが好きなだけなんだよ。」
翔人はやっと口を開く。
「美咲さん。どうしてその事を?」
「翔人くんが、純粋にバスケが好きな顔してたからかな・・・」
翔人は顔を上げ、にこりと笑い言った。
「ありがとう、美咲さん。僕、大和さん探しに行ってくる!!」
そう言って勢いよく部室を飛び出した。
「頑張ってね・・」
美咲の声は風の中にすっと消えていった。