星の蒼さは 103

金太郎  2008-07-31投稿
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「み、緑です……」

一か八か、藍は賭けた。

「……確かか?」

研究員は隣の男に尋ねた。

すると、その男は閉じていた目をかっと開いた。ぞっとする、白い目だった。

「……間違いない」

「ふむ。じゃあ次」

研究員は檻の中のウサギを指した。

「何色だい?」

今度は、何色だ?藍は待った。

黄色だ!

また、どこからか声がする。

「黄色です…」

研究員はちらと、隣の男を見る。

「…確かに」

研究員はふうっと息を吐くと、上機嫌になってこう言った。

「合格だな。はぁ、よかったよかった」

藍の顔写真の貼ってある書類に大きな赤丸のハンコを押すと、藍に向き直って言った。






アキが見て、アポロが伝える。作戦は大成功だった。

「やったー……!」

小声で歓喜の声をあげ、二人は笑いあった。
もちろん、見つからないように、だ。

試験官もよろこんだ様子で書類に何かを書き込んでいる。
これで藍は助かる。

少なくとも、アキもアポロもそれを素直によろこびあった。

「シッー!見つかるよ!」

目配せしながらもアポロも笑いを止められない様子だった。

やっと落ち着いて、二人は押し黙った。


沈黙が流れたからだろうか。

その後の試験官の言葉がやけに、よく聞こえた。


「かわいそうにな……。死んだほうがよかったって思う日が必ずくるぞ。くくく……」


二人は固まった。

「ナンバー1205。お前はこのまま、首都アルテミアの〔月立戦略兵器研究所〕に送られる。部屋には帰れないぞ。このまま行く」

そう言うと、研究員は傍らの男達に目配せした。

藍は男二人に無理矢理立たされ、歩かされる。

「いや!やめてってば!」

「あそこはヤバいぞ………くくく、正解率100%を引き渡したとくれば、俺も幹部に……くくく」

試験官は天井を仰ぎ見、肩を揺らして笑った。

ダメだ。アキは震えが止まらなかった。
藍が連れていかれる。

自分のせいで?

藍が酷い目にあわされる。

自分のせいで。


アキは何もわからなくなり、隠れていた物陰から立ち上がり、叫ぶ

「やめろ!!!」

だが、それはアキの口から発せられたものではなかった。

「アポロ!?」

傍らを見ると、凄まじい形相のアポロが立ち上がり、一点に男達を睨み付けていた。



両の瞳に邪悪な〔赤〕を灯して。

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