崖から続く道

黒風呂  2008-07-31投稿
閲覧数[584] 良い投票[0] 悪い投票[0]

不思議な崖があると言う。
飛び降りると生まれ変われるのだそうだ。
過去に数多くの人が飛び降りたらしい。
しかし皆、生きて帰ってくると言う。
崖から下をみるかぎり、森で地面は見えないが、かなりの高さだ。確実に死ぬ。
やはり噂は本当なのか。
『生まれ変わった人』達には不思議なことがおこっている。
たとえばある男。
彼はガンだった。余命一週間と言われていたが、そのガンが完治したらしい。
さらに不思議なことがおこった者もいる。
『生まれ変わる』と言われる理由がわかる。
その崖ではかなり多くの人が救われたらしい。

私はそんなもの信じてもなかったが、ここに来てしまっていた。
事故で無くした右手がほしかった。
というのも私は画家なのだ。絵を描くことにしか幸せを感じない。死んだっていい。だからきたのかも知れない。

さすがに高い。
私は少し震えていたがもう決心はついていた。
とりあえず飛んでみようという軽い気持ちで私は落ちていった。


痛い。
私は普通にけがをしたらしい。重傷だ。私は崖下の森にいるらしい。
立つこともできない。

だが私は恐ろしい光景を目にした。
かなりの数の死体だった。全員落ちたことにより死んだ者達らしい。しかしよくみると、つい先日崖をとんだと自慢してきた友人の死体もある。彼は生きていたのに。
私は考えた。
おそらくだ。
ここで死ぬことによって新しい体を手にいれ、その中に私の魂みたいなものが入るのではないか。
ということは私は死を待たなければならないのか。
まあおそらく死ぬだろう、かなりの出血だ。私は期待をしていた。そして自分が落ちた崖を見上げる。

そこで、私は真実をみてしまった。
友人は一度死んでよみがえった。私はそう思いこんでいた。
でも違う!
今私は見てしまった。
崖の上にいるのは、両手がついた自分だ。
私がまだ生きているのに、あそこに私がいるということは。

あいつは私でもなんでもない。
きっと全くの別物。
友人達もみんな。
新しく作られた別物だったのだ。
みんなほんとうは死んでいたんだな。
きっとあの別物が、なにくわぬ顔で俺を演じるんだろう。

そして私は静かに目をとじた。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 黒風呂 」さんの小説

もっと見る

ミステリの新着小説

もっと見る

[PR]
素敵なお相手紹介
(*^^*)無料体験☆


▲ページトップ