空港には少し早めに着いた――
彼女は直ぐに搭乗手続きを済ませ、小さめのキャリーバック一つを預けた。
此処、新千歳空港には、吹き抜けの造りのショッピングモールがある。
僕達は時間までを、そのショッピングモールを見て過ごす事にした。
『そこのお兄ちゃん!!彼女に、ほれ、美味い毛ガニのお土産なんていいっしょ?!』
海産物を主に扱っているらしい土産屋の大将が、僕達を北海道観光に来ているカップルだと勘違いしたのか、
わざとらしい北海道弁なまりを混ぜて、毛ガニを勧めてきた。
『はぁ。どうも。』
こちらもわざとらしく愛想笑いをしながら、その土産屋の前を通り過ぎた。
『あはは。あたし達、観光客に間違われたのよね、きっと。』
『うん。さっきから同じ店の前をぐるぐる回ってるからね。』
『いやだぁ。だから?!よね?!』
『そうだと思うよ。』
そんなたわい無い話をして過ごしているこの時間が、もう二度と戻って来ないのかと思うと、
この一分‥一秒が物凄く大切に思えた。
『未來。見て。四つ葉のクローバー。』
エリカちゃんが手に取ったのは、四つ葉のクローバーが埋め込まれたキーホルダーだった。
『それ、買ってあげるね。エリカちゃんに幸運をもたらしてくれるように。』
『あ、ペアのネックレスタイプもあるわよ。』
『いや。ネックレスじゃない方にしよう。』
僕は、その四つ葉のクローバーが埋め込まれたキーホルダーを彼女にプレゼントした。
最初で最後のプレゼントを。
『ありがとう。御守りだと思って大切にするね。』
『そうだ!!エリカちゃん。展望デッキに行ってみない?!』
僕は、彼女を展望デッキに誘った。
展望デッキに出ると――
キイイイイイ――――ン―ー‐
今、離陸したばかりの飛行機が、空の彼方に消えて行くのが見えた――