「ありがとう。やっぱり花火は線香花火だよね。」
「まったく、アイは昔から線香花火が好きだな。まるで子供みたいだ。」
「うん…」
パチパチ、僕らはしばらく静かに花火を見つめた。そして線香花火の玉が落ちたとき、アイは話しかけてきた。
「ねぇ、ユウちゃん。これからもずっと一緒に花火してくれる?」
アイの顔は何か深く思い詰めているようだった。僕は静かに、強くアイを抱きしめた。
「大丈夫。これからもずっと一緒にいる。一緒にいてやる。」
アイを抱いている腕にさらに力が入った。
「ありがとう、ユウちゃん。」
アイの顔は見えない。けれどもアイが泣いているのはわかった。アイの涙が僕の頬にも伝って来た。
僕はこの時、アイとどんな時でも一緒にいるとアイの涙に誓った。もしアイが明日、今日の事を忘れていたとしても僕が必ず思い出さてやると足元の線香花火に誓った。
十年後
「ねぇ、ユウちゃん。花火しようよ。」
「また花火?昨日もやったのに。アイは花火が好きだなぁ。」
「だってキレイなんだもん。あのパチパチした…セン?」
「線香花火。わかったよ、取って来るから待っててよ。」
「うん。」 パチパチ…終へ