星の蒼さは 104

金太郎  2008-08-01投稿
閲覧数[469] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「アポロ?アキ!?」

二人の男に両腕を抱えられながら、藍は驚いたように目を丸くした。

「な、なんだ!?どこから入り込んだ!?」

試験官が悲鳴をあげた。

「手を離せ」

アポロは二人の男に向かって言った。

「捕まえろ!殺すなよ!」

試験官がわめき、藍を捕えていた二人が藍を離してアポロに襲い掛かった。

アキは目の前のアポロを見てぞっとした。

〔真っ赤〕だった。

まるで血が気化して立ち上っているようだった。
全身が濃い〔赤〕で塗り潰され、輝いている。

そこまでわかって、アキは激しい頭痛に襲われた。

脳天を衝くような。激しい痛み。脳を直接わしづかみにされたようだ。

真っ赤な光が心に流れ込んでくる。

おぼろ気ながらわかる、〔色〕の正体。



〔憤怒〕



これがアポロという人間の根底に存在する感情の姿かたち。

アポロの正体。


だが、この場でそれを理解したのは、藍の解答の正否を確認した試験官の一人と、アキだけだった。

「やめろ!!」
「やめて!!」

二人同時に叫んだ。

だが、既にアポロに掴み掛かろうとしていた二人を止めるには遅すぎた。


「邪魔だ!!」


アポロの声が、やけにはっきりと聞こえた。

一瞬時間が止まった。



「あがァァァ!!?」



続けて、怒号とも悲鳴ともとれない絶叫が純白の実験室中に轟く。

「!?」

絶叫した二人の男達は、頭を抱えて転げ回った。

「畜生ッ!畜生ォアアアアイアオオ!!」

「うぎィィあッ!……ぶっ殺してやるゥグァァァ」

何やら聞くに耐えない罵詈雑言を並べ、絶叫する男達。
白目を剥く程のたうち回り、そして最後に「あ″………」と小さく声を漏らし、その場に二人同時にグシャリと倒れこんだ。

目から、鼻から、そして耳からも大量の血液が噴き出している。

壮絶な最期だった。

その場全員が呆気に取られて立ち尽くす。


〔憤死〕だった。


目を反らす事も出来なかった。

「なん…で?」

やっと声を絞りだして、それで栓が抜けたのか。

喉の奥から何か熱いものがムクムクと上がってきた。すかさず押さえたが間に合わず、口からは今朝食べた食パンが未消化のまま噴き出し、汚い音を立てて床に落ちた。

だが、誰も眉をひそめるような者はいなかった。


一拍遅れて部屋を支配したのはアポロの笑い声だった。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 金太郎 」さんの小説

もっと見る

SFの新着小説

もっと見る

[PR]
憧れのモデル体型
2800円で可能!?


▲ページトップ