黒色のキャンバスに白で絵を描こうとしたが、何も描けずに二年が過ぎた。
3年目の冬、諦めて黒を重ねた。
何も変わらない自分がそこにいた。
勇気がいることには挑戦できずにひたすら目立たず小さくなっていたが、ある時…気付いた。
楽しくないことに
黒のキャンバスでは誰も見向きもしないし、立ち止まることはない。魅力がないからだ。
時に額縁を金色にしたりカラフルにしたりすると反応が良い時もあるが、すぐに飽きられてしまう。周りが良くても所詮黒だから…。
何か別の色で描かないと。と思ったが私は黒以外知らない。
ふと周りに目をやると黄色や赤で描かれたきれいな絵。
真似をしたいができない自分
黒のまままた飾ることにした。
三年後、一人の女性が黒の絵の前で立ち止まった。
これは絵ですか?と尋ねる
はいそうです。作者の心ですと
女性は売って下さいと言った
これはお売りできませんと答える
どうして?
これはまだ未完成だからです。作者は描きたいのです。
女性は言う。私は黒のこの絵が好きなのですが
私は首をかしげた
この絵を何度も見ていて気付いたんです。黒色の中にも、微妙な光と影があるってことに。
思いがけない言葉に、私は動揺して黒色の絵を見直した。
意外に味のある良い絵に見えた。
それと同時に、鮮やかな色の配置が頭に浮かんだ。
ありがとうと…お礼を言おうと振返ると、女性の姿はもうなかった。