彼女の姿が見えなくなると、僕はまた展望デッキに上がった。
『パパ。あれ、ジャンボ?!』
『うん。そうだよ。大きいねぇ。』
見た感じ、30代半ば位のお父さんと、その息子かと思われる5〜6歳位の男の子が僕の直ぐ横に立ち、仲睦まじく会話をしていた。
思わず頬の筋肉が緩んだ。
自分の子供の頃の姿と重なったからだ。
♪ ♪ ♪ ♪ 〜 ♪
ふと、携帯からメールが届いた事を知らせる着メロが鳴り響いた。
《未來。もう飛行機に乗り込む時間が来たの。今日は時間まで付き合ってくれてありがとう。気をつけて帰ってね。》
エリカちゃんからだった。
あと、もう何分かでエリカちゃんは、この住み慣れた北海道から離れる事になる。
メールの返事を読んでもらうのは今しかない。
僕は直ぐにメールを返信した。
《“付き合った”んじゃないよ。僕が一緒にいたかったんだ。エリカちゃんもお体に気をつけて。》
ありきたりな内容になってしまった事に少し後悔した。
本当は、もっと格好いい別れ方をしたかった。
そんな事にこだわっても、君とはもう一緒の時間を過ごす事が出来ないのに。
滑走路を動き始めた一台の飛行機が、今離陸した――
太陽の光が眩しくて――
目を細めながら空を見上げた――
涙で霞んだ飛行機は――
やがて――
空の彼方へと姿を消した――