何分たっただろう。
やっと落ち着いてきた私と向かい合うようにケンジが座り込んだ。
無造作に手で私の涙をぬぐう。
少しはっきりした視界の中にいるケンジは、真っ直ぐに私を見ていた。
射抜かれた様に動けない。こんな風に見つめあったのはすごく久しぶりで、思わず眩暈すら感じる。
と、ケンジが私を見つめたまま口を開いた。呟くように、でもしっかりと力強く。
「俺はさぁ。どこにも行かなくても、何にもしなくても・・・お前が隣に居たらそれだけで幸せなんだけど。」
本当に倒れるかと思った。
「ケンジ・・」
無意識にまた溢れてきた涙を、ケンジがぬぐう。そしてそのまま抱きしめてくれた。
「でもお前がそんなに不安になってるとは思わなかった・・ごめん。ちゃんと・・・好きだから。」
最後の方はほとんど聞き取れないくらいの囁き声だけど、無愛想で恥ずかしがり屋なケンジの精一杯の愛の言葉。私が一番欲しかった言葉。
「ぅん。うん・・ありがとぅケンジ・・。」
力強い腕に抱かれて、ケンジの肩越しに見えた携帯の液晶。
すっぴんの私が、満面の笑みでこっちを見てた。
気付いただけで、世界は変わる。
ほら、もぅピンク色。