「そうです」
リグラはアリネスの問いに、懐かしそうな表情で、頷いた。
「わしとロバートは同時期にそれぞれ騎士団と宰相府に入り、ある事がきっかけで知り合って、そのまま良き友人同士になりました。…ロバートとはよくこう言い合っていましたよ。『お前は剣で国と国民を守れ、俺は頭脳で国と国民を守るから』とね」
リグラは恥ずかしそうな表情をしながら、ぽりぽりと頭を掻いた。
「知り合ってから十年後に、わしは宰相の最優力候補に名乗りを挙げ、彼は王宮護衛騎士の副隊長に任命されました。お互いよくここまで来れたなあ、と、二人で酒を飲みながら語り合ったものです。…ところが、この年、悲劇が起きたのです」
「悲劇…?」
「ガイアス様が、何者かによって暗殺されたのです」「!」
三人は驚いて、一瞬、アリネスの方を見てしまった。アリネスはその視線に、一瞬、肩を震わせたものの、静かにリグラの方を向いて、
「おじい様の暗殺犯はもう処刑されたと思うけど…何故それとロバートが関係あるの?」
と、落ち着き払って、尋ねた。
「ロバートは当時、暗殺犯としての嫌疑をかけられていたのです。…無論、私は信じてはいませんでしたが…」
リグラは苦い顔をして、答えた。