冷たい
ひんやりとした床の感覚が右の頬にある
おかしい
真夏の しかも日なたの道路で倒れたはずなのに
目を開けると暗闇が広がっている
倒れてそのまま夜まで寝ていたのだろうか…
目がだんだんと慣れてきた頃自分は驚愕した
「ここ…牢屋…?」
思わず声に出してしまった
自分は牢屋など見たことがないので確信はない
だがおそらくここは牢屋だ
私は鉄の檻の中に閉じ込められていた
気付くのが遅かったがここは異様だ
檻の中には隅になぜか古びたテレビがある
そしてもうひとつ
牢屋の扉には鍵さしっぱなしになっている
逃げてくださいと言っているようなものだ
その時思い出した
血…胸から…
震えながらそっと視線を胸に落とした
?
胸から…
赤い糸のような物が出ている
牢屋の異様さなどより自分の姿のほうがよほど異様だ
糸は牢屋の外へ そして闇の中へと伸びその先は見えない
震えがとまらない
「し…死んじゃったの…かな私…」
涙が溢れる
別に胸が痛いからではない
理解できない状況が生み出す恐怖のせいだ
涙をぬぐい怖がりながらも糸を少し引っ張ってみた
糸が引っ張られると皮が山なりになる
完全にくっついているようだ
ふとテレビに目をやった
?
テレビには電源のボタンしかついていない
不良品?
押してはいけない
そう思っているのに指はボタンにのびる
体が脳からの命令を聞かない
思わず目を閉じた
カチリ
音が牢屋に響き渡る
震えながらそっと目を開く
画面には…
色が反転した自分の顔が映っている
自分の顔を見てこんなに驚いたのは初めてだ
反転した自分が口を開く
「て かったーないふ ほうちょう どれがあなたのみぎて?」
反転した自分は幼稚な声で意味不明な事を言い出した
「て かったーないふ ほうちょう どれがあなたのみぎて?」
…
普通に考えれば「て」だ
だけど後の二つが気になる
なぜ刃物なのか
刃物が右手なわけがない
「どういう意味なんだろ」
「なにもしらないのね」
驚いた
今…テレビと会話を…
「いまからほかのあなたところしあってもらうの」
意味がわからない
理解できない
「はやくえらばないとほかのあなたがくるわよ」
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