「……なぁチカ」
髪をいじりながら、チカは顔だけこっちに向けた。
「俺思うんだけどさ、森君のお父さんて本当に犯人かな?」
黙って首を傾げるチカは、もう興味が無いように
「知らなーい」
「でも異常だよな、自分の息子の眼球舐めてんだぜ…」
昼間、刑事二人が漏らした言葉を思い出す。
「しかし、何ですかねぇ、」
「どうした」
「いや‥この親父さん、さっきからブツブツ言ってるんですよ」
「……気にするな。よく見られる一種の精神障害だ」
「………はあ‥」
ドラマでみた刑事像は、美化されたものだと感じながら、親父さんの口元を見る。
「…アア、ナンデカナア……ナンデカナア」
取り押さえられて頭でも打ったか…。
「チカチャン、チカチャン…アア、アアチカチャン…犯人」
「チカ?……。」
「よし行くぞ」
「それじゃ、ご協力ありがとう」
返事を返す前に、パトカーに乗り込もうとしたので、黙って頷いた。
親父さんの言葉の事より、どうしたら人付き合いがうまくなるのか考えながら、パトカーを見送った。