Mind Adventure 31

籬 規那  2008-08-04投稿
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気持ち次第で、何でもできる。

そう思っていた時があった。



俺は、天才なんだと。




左足の大腿部の痛みに顔を顰め、それとともに我に返る。

確かに、人より優れていると言われるようなような点は、多いかもしれない。



だけれど、それは違った。


自分自身への己惚れこそが、半端な才気の証しだと、どうして誰も教えてくれなかった。

何故気付けなかったんだろう?




―――堕ちていく。

二つの意味で。


本当なら、怪我なんかをするような相手じゃなかったはずだ。


何が変わった?
―――全て、が。



自答を他人の声のように感じる。


かしゃん。

金属音が、空気を震わす。


長い間握りしめていて、白く冷たくなった手が、自分の頬に触れる。



親鳥の元の小鳥に似た心地よさに身を委ねながら。


堕ちる。
墜ちていく。

もっと。もっともっともっと。





深くまで…………









急激な魔力の高まりを感じて、妖需が飛び退くのと床がはじけ飛ぶのは殆ど同時
だった。


「妖需!!何処にいる?」

「10時方向!そんなに遠くない!」


こういう時には、魔力の探査能力が高い妖需が追尾の役目をする。


道の相手を前に、初めに動くのは一番体が強くできているディル。


そんな役割分担が、自然と出来上がっていた。



何時もの如く、走り出したディルを黒い影が追い抜いた。



漆黒の法衣が、半開きのドアの隙間から滑り込む。


直ぐに上がった掠れたような悲鳴に、妖需らははっとなった。



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