愛情をいっぱいに感じ、愛情の方法を一つ一つ手探りで学習した僕は、物理的にも亜紀に愛情を表現したくなった。
月下美人を見る少し前の事。急に亜紀に会いたくなって、夜、公園に呼び出した。
仕事と介護でいつも疲れていた亜紀を、僕は随分振り回していたのだろう…。亜紀は出て来てくれない時もあった。
早めに風呂に入った日は化粧をしてないから…だなんて言い訳もよくしてた。（すっぴんも可愛いって言ったのに、信用してくれなかった…） 二人でせつないラブストーリーの映画を見た後だったから、それと、暗いから風呂上がりでも大丈夫だろう、なんて強引に僕が呼び出したから、亜紀はやってきた。薄く薄く化粧をして。
亜紀は古風だったから、会う時はいつもきちんとしていた。たとえ風呂あがりでも。
そういうところも好きだった。
ずっと話しているだけで、そばにいるだけでいいと思ってた。彼女はたまたま彼氏がいなかったから、僕を相手にしてくれる。可愛い弟のようなものなんだろう。
そう思ってたから、僕は何もしちゃいけないって思ってた。
いや、言い訳かもしれない。拒絶されるのが怖かった。
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