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クリスマスが終わると、次に来るのはお正月。
今日は大晦日――
冬休みって何故か夜型人間になっちゃうあたし。
今朝も、ちょっとハマっちゃったケータイ小説読んでいたら、何時の間にか窓の外が明るくなっていた。
でも、あたしにとってダラダラ過ごせちゃうのが休みの醍醐味なんだ。
『奈央。母さん、奈央の好きな黒豆と旨煮だけは作っておいたからね。
今年も母さんの知り合いに頼んで、御節を予約してあるの。
ごめんね。母さん忙しくて全部作るのは無理なのよ。』
『うん。そんなの分かってる。あたしはお母さんの黒豆と旨煮だけあればいいよ。』
あたしは母の作る“旨煮”が大好きだった。
あたしには、まだ母の様に美味しく作る事が出来ない。
だから、この時ばかりは、毎年母に作ってもらうんだ。
『それじゃあ、母さん仕事に行って来るね。』
『お母さん!!』
『えっ?!』
『今日、スナックから帰ってから、寝てないでしょ?!
“旨煮”作ってたから。』
『ううん。大丈夫よ。仮眠してるから。ありがとう。
奈央は心配しなくていいのよ。
今日は大晦日だから、早く帰って来るわね。』
母は、そう言って勤務先のお弁当屋さんへ出掛けた。
大晦日なのに。
頑張り過ぎる位に頑張る母の姿を見る度に、あたしは何時も胸がキュンと痛み、心に憤りを覚えた。
そして、そういう時は、決まって“あの男”の事を思い出した。
母をこんなにも苦労させる事となった原因を作った、“あの男”の事を。
あたしが薬無しでは生活が出来ない程に心を壊された、“あの男”の事を。
母が仕事へ出掛けたら、あたしは部屋の中の大掃除を始めた。
母の常日頃お世話になっているスナックのママの知り合いの伝で貸して頂いている、家賃2万円のこの一軒家は、
母と2人で住むには、とても広すぎたから、大掃除するのも一苦労だった。