男の笑い声がした。
嘉代が顔を上げると、茶髪の男声が振り返って笑っていた。
少し日に焼けた肌をしている。
「相変わらずトロイなぁ、嘉代ちゃんは。」
成長した幼なじみの幸一（コウイチ）だった。
小学校の頃、幸一の家族の都合で田舎町に引っ越したきり、ろくに連絡をとれずにいた。
「こ、こーちゃん！？」
幸一は笑いながら嘉代の倒れた荷物を立て直した。
その笑顔には幼なじみの面影が確かにあった。
「なんでこーちゃんが！？」
「こーちゃんはよしてくれよ。高校生だろ、お互い。」
言われたものの、嘉代と幸一とは一見すると兄妹に見えるほど顔つきに差が出ていた。
幸一はすっかり大人びた顔つきに成長していた。
「嘉代ちゃんは全然変わらないなぁ。昔のまんまだ。」
麦わら帽子を深く被り直し、幸一の横に嘉代はくっついた。
―背、高いなー…―＼r
「…あ。それでどうしてこーちゃんがこの町に？」
「親父の実家がここで、昔から漁師やってたんだ。俺もいつかは継ぐことになってた。」
漁を手伝ううちに、同年代よりもずば抜けて体格の良い高校生になったというわけだった。
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