本当に亜紀を僕だけのものにしたくて、もっと先に進んでしまおうと思ったこともあった。
でも亜紀は、そんな簡単なことで、つまりセックスをしたからって手に入る訳じゃない。
いや、むしろ逆だ。亜紀は恐らく、いや絶対に拒絶しただろう。それは分かってた。
亜紀が前に言ってた事。
「男の人を見る目が変わってしまった。」
それを思い出していた。
亜紀は魅力のある大人の女性だったし、僕だって一応男だ。理性を保つのは大変だったけど、身体の関係だけが愛ではない。
だって、出来ちゃった婚が失敗するなんてよくある話だし、浮気や離婚なんて世の中に溢れてるじゃないか。
二人でそんな話もしたっけな。
でも、そこに行く前に僕らの関係は終わってしまった。というのも事実かもしれない。
僕らは喧嘩もしたけれど、大抵僕が子供じみた事を言って困らせていたのがほとんどだ。
その時も、前の彼氏の事が気になって質問してしまったのがきっかけだった。
「どんな仕事をしていた人だった?」
僕が仕事にコンプレックスを持っているのを知っていたから、亜紀は、
「どうでもいいじゃない」
と言った。それは親切なことだったのに…